前回、「マネーマスターズ列伝」より「ジョン・ネフ」を紹介した。
今回は、海外投資・ショート(売り)とロング(買い)といった様々な投資手法で成功した「ジム・ロジャーズ」について紹介したい。
評判のよろしくない国
ジム・ロジャーズは、評判のよろしくない国々に投資して大きな儲けを生み出した人物である。そして、ロジャーズは評判のよろしくない国に対して投資に値する国なのかどうか?それを確認するために、以下の四つの基準で設けて判断していた。
①政治・経済状態が改善に向かっていること。
「マネーマスターズ列伝」より引用
②一般的に認識されているよりも実際の経済水準が高いこと。
③通貨の交換性があること。もし一カ月先に交換可能になる見通しがあるなら、一カ月待てばよい。その後でも、投資の機会は十分にあるのだから慌てるなかれ、というわけだ。
④売りたいときには売れるという流動性が備わっていること。「間違ったと気付いたら、すぐに改めるには当然だ。そういうときに売れないようではね」と彼はいう。
ロジャーズは外国で投資を始める場合には、ごくふつうのルートを通じて行うことを原則にしている。自分だけ買えて他の外国人は買えないというのでは買った意味がまるでないとし、そういう国に投資することは避けるべきだと言っている。
空売りと天井
ロジャーズは空売りについて、以下のことを述べている。
みんながまだよく知らない国に投資するのは、たしかに痛快だ。だが、みんなが強気の国を空売りするスリルに比べたら問題にならないね
「マネーマスターズ列伝」より引用
ロジャーズにとって空売りは、値上がりを狙った株の信用買いに勝るとも劣らない味のあるゲームだとして、オーストラリア株やスウェーデン市場などで空売りをおこない大きな成功をおさめた。そして、ロジャーズが天井を見抜く方法として、投資銀行や証券会社などの例を引いて以下のように説明している。
大量の従業員を新規採用し、業務を広げ、資本市場で資金調達を行い、ハーバード・ビジネススクールのほとんどの卒業生が投資銀行志望というアンケート結果が発表される。こんな場合、終末は近い。また、ビジネススクールの卒業生たちが一つの業界に殺到するときも、その業界の業績は天井を打ったというサインだ。たとえば、ある年、当時ビデオゲーム・メーカーとして急拡大中のアタリ社が、ハーバード・ビジネススクールの卒業生の5%を採用したが、その3年後に同社は潰れた。
「マネーマスターズ列伝」より引用
上を見る前に下を見よ
ロジャーズ流株式投資の原則の一つに「どんな悪材料が出てきても株価はもうこれ以上は下がらないはずだという確信が持てる場合に株を買うとこと」というのがある。そして「自分は上値を望む前にまず下値に注意を払う」ともロジャーズは言っている。
では、下値・底値をどのように判断すればよいのだろうか?その見抜き方として、ロジャーズ独特の観点を以下のように述べている。
たとえばある産業で数社の大企業が赤字転落となったとき、つまり1970年代の自動車産業のような状況では、次にやってくるのは二つに一つ、自動車産業そのものが消えて失くなってしまうか、あるいは回復に転ずるかのいずれかである。自動車産業が消失することはまずありえない。とすれば、残るは回復のみである。
「マネーマスターズ列伝」より引用
実際にロジャーズは、自動車産業の回復への転換点を読み、当時不振に喘いでいたフォード、GM、アメリカン・モーターズを底値で購入し大成功をおさめている。
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