前回、「マネーマスターズ列伝」より「ベンジャミン・グレアム」を紹介した。
今回は、金融のプロ達が自分の財産の運用を他のファンドマネージャーに任せるとしたらこの人を選ぶと言われる「ジョン・ネフ」について紹介したい。
バリュー志向のファンドマネージャー
ネフが株を買いに出るのは割安株の低落時だけである。そして、その株が活況に沸きネフの基準で割高となれば必ず売却した。また、ネフには多くのバリュー志向のファンドマネージャーと異なる点がある。それは、配当収入の重要性に強くこだわっていた点である。
この投資スタイルでネフは、1964年~95年の31年間で複利年率14.8%の好成績を残したいる。仮に同じ期間にS&P500種株価指数に1万ドル投資していれば24万8,000ドルになった。だが、ネフのファンドに投資していたならば57万7,000ドルにまで増えた計算となる。
配当収入の重要性
ネフは株式市場について、以下のように述べている。
株式市場というものは成長性を過大評価しがちなものであるうえ、成長株には二つの弱点があるというのだ。一つには、成長株は死亡率が高い―つまり成長株の折り紙がついてからの成長期間は意外に短いことが多いということ。もう一つは、成長率は少々劣っても、現在高配当を続けている株のほうが総合利回りがよくなるケースがしばしば見られるということである。
「マネーマスターズ列伝」より引用
そして、ネフは配当収入の重要性をこのように説明している。
利益成長が15%のA社の株を購入した場合、株価は15%上昇する。だが、会社は余分なキャッシュフローをすべて成長のために再投資に回すため、配当はごく限られてくる。そのため、投資家の利益は実質的には15%の値上がり益だけとなる。
一方、こんどは利益成長率がより低い、たとえば10%のB社の株を買ったとする。こちらの会社は成長のための設備投資の必要性も少ないから配当余力もその分だけA社に勝り、たとえば5%が可能である。そしてこの場合の投資家の採算は、配当収入の5%と値上がり益の10%で計15%となり、A社の場合と同じになる。
この2つの例の場合、どちらの会社に投資した方がよいのだろうか?ネフは迷わずB社だと答えている。B社の方が、A社に比べて投資収益の確実性が高いことが大きな理由である。
バーゲン・ハンティング
ネフは自らを「低PERシューター」と呼んでいる。しかし、ベンジャミン・グレアムと違って、低PERという理由だけでは株を買うことはせず企業の中身も重視して株を購入している。そして、ネフの考える優良企業の選択基準は以下の通りである。
①バランスシートが健全であること。
「マネーマスターズ列伝」より引用
②キャッシュフローが一定水準以上であること。
③株主資本利益率が業界平均以上であること。
④経営者が有能であること。
⑤この先も一定の成長を続ける見通しがあること。
⑥製品やサービスに魅力があること。
⑦需要拡大が見込める製品の市場に参入していること。
ネフによると、高成長企業は投資家が過大評価しがちであるため買い対象から外される一方で、ゼロ成長企業には何らかの欠陥がある可能性が強くこれも失格となる。結果として、ネフが買う銘柄は成長率が8%付近となるバーゲン株が多いという。
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