株式投資でのテクニカル戦略はバイ・アンド・ホールド戦略に敵わない、「ウォール街のランダム・ウォーカー」

株の本のイメージ株の勉強

株式投資の本を読むと、大抵の本にはチャート分析などのテクニカル戦略の説明が記載されている。このテクニカル戦略については、初心者向けの株の本にも書かれているので目にした人も多いと思う。

だが、テクニカル戦略を用いるよりも単純に買った株を持ち続けるバイ・アンド・ホールド戦略の方が良い成績を残せるとしたら、テクニカル戦略を学ぶ必要はあるのだろうか?

アメリカの経済学者で「ウォール街のランダム・ウォーカー」の著者であるバートン・マルキールは、「テクニカル戦略はバイ・アンド・ホールド戦略に敵わない」としている。ので、今日はその内容を紹介したい。

また、前回の記事で「ウォール街のランダム・ウォーカー」より『株式投資で成功するための「3つのルール」』という内容を紹介している。興味があれば、以下を参照して欲しい。

テクニカル戦略は儲かるのか?

「勝ち馬は残し、負け犬は売れ」「値動きの悪い銘柄は売れ」「相場のことは相場に聞け」という株の格言がある。これらは、すべてテクニカル戦略から生まれた言葉である。

さまざな格言を残すテクニカル戦略は、株式市場で有効なのだろうか?

そのことを確かめるために、「ウォール街のランダム・ウォーカー」では高度なテクニカル手法として有名な「フィルター法」「ダウ理論」「相対強度(レラティブ・ストレングス)法」「株価-出来高法」と単純なバイ・アンド・ホールド戦略の成績を比較している。

フィルター法

フィルター法は、直近の下値から5%以上上昇した時点で株を購入して、その後の高値から5%下がった時点でそれを売却、あるいは空売りする手法である。

今回は説明のために5%という数字を使用したが、この数字については、特に決まった数値はない。どのような値を用いてもかまわないとされている。また、この数字が「フィルター」と呼ばれる一定の幅を示しており、この幅に従って売買を繰り返すのがフィルター法の投資手法である。

フィルター法のテスト結果については、以下の通りである。

フィルター幅として1~50%に至り、様々な幅を用いてテストをした。その結果は、フィルター法に基づく投資戦略は、その戦略で発生する売買手数料を考慮すると、同じ対象に同じ期間投資したバイ・アンド・ホールド戦略のパフォーマンスを継続的に上回ることはできなかった。

ダウ理論

ダウ理論は、抵抗線と支持線との間に繰り広げられる壮大な綱引きである。

相場が頂点をつけ下降した場合、以前に相場の頂点をつけたピーク価格を抵抗線と呼ぶ。そして、相場が再び上昇し、以前のピーク価格に近づくと、抵抗線を「テストする」と表現される。

もし、相場が抵抗線をブレイクすれば、以前の抵抗線は支持線となり、しばらくは相場の上昇が期待できると判断する。

反対に、相場が「抵抗線を抜けなかった」り、これまでの支持線となっていた安値を下回ったりすると、それは相場が下降する弱気のサインを意味しており、投資家は売りを勧められるのである。

ダウ理論のテスト結果については、以下の通りである。

市場平均を構成する代表的な銘柄群をバイ・アンド・ホールドで投資するのに比べて、ダウ理論のパフォーマンスは、若干ながら劣ったものであった。

その理由としては、ダウ理論を採用した場合、この戦略に基づいて投資家が売買を繰り返すごとに、幾度のも余分な手数料を支払わなければならないからである。

相対強度(レラティブ・ストレングス)法

相対強度(レラティブ・ストレングス)法とは、投資家は好調な銘柄、つまり直近期に代表的な市場インデックスを上回るパフォーマンスを上げた銘柄を買って保有する。

その反対に、市場に比べて不調な銘柄は避けるか、もしくは売り越す手法である。

相対強度(レラティブ・ストレングス)法のテスト結果については、以下の通りである。

取引手数料と税金のことを考慮にすると、相対強度(レラティブ・ストレングス)法では、バイ・アンド・ホールド戦略を上回るパフォーマンスを上げることはできなかった。

株価-出来高法

ある銘柄が出来高の増加を伴って株価が上昇する場合、その銘柄は強い買い意欲があることを意味しており、買いサインとなる。

反対に、大量の出来高を伴う下げの場合、売り圧力の存在を示しており、売りのサインとなる。このサインに従って、売買する手法が株価-出来高法である。

株価-出来高法のテスト結果については、以下の通りである。

取引手数料と税金のことを考慮に入れると、株価-出来高法を用いるよりかは、いくつかの銘柄に分散して投資し後は何もせずに持ち続ける。このバイ・アンド・ホールド戦略の方が良い成績が残せた。

テクニカル分析の危険性

テクニカル分析を用いて相場変動のタイミングを当てるアプローチの危険性を、「ウォール街のランダム・ウォーカー」では以下のように述べている。

株式には長期的には上昇トレンドがあるから、タイミングに備えて大きなキャッシュポジションを抱えていることの機会損失は大きい。相場の下落を恐れて大きなキャッシュポジションをとる投資家は、しばしば上昇相場に乗り遅れてしまう。ミシガン大学のH・ネガット・セイバン教授は、1960年代半ばから90年代半ばまでの30年間に起こった大きな上げ相場の95%が、この期間の約7500取引日のうちのたった90取引日に起こったことを確かめている。もし全取引日の1%強にすぎない90日を外したとすると、株式投資の高い長期平均リターンの大部分は、実現しなかったことになる。

もっと長期で見ても、『マスター・トレーダー』の著書であるラズロ・ビニリーは次のように指摘している。「1900年にダウ30平均に1ドル投資して2013年初めまで保有したと仮定すると、その価値は290ドルに増えたことになる。しかしもし毎年もっとも相場が上昇した5日間を外したとすると、2013年の投資価値は1セントいかになってしまっただろう」と。

「ウォール街のランダム・ウォーカー」より引用

テクニカル分析を用いて売買した場合、タイミングを逸するとその成績は悲惨なものとなる。そのことからも、単純なバイ・アンド・ホールド戦略は少なくともどんなテクニカル戦略よりもましである。

また、バイ・アンド・ホールド戦略はキャピタルゲイン課税の支払いを先延ばしにするメリットが存在する。

このメリットが、単純なバイ・アンド・ホールド戦略の方がテクニカル戦略よりも良い成果が残せる。その重要な要因の1つとなっていると「ウォール街のランダム・ウォーカー」では述べている。

最後に「ウォール街のランダム・ウォーカー」では、「テクニカル戦略」と「バイ・アンド・ホールド戦略」を比較して以下の意見を述べている。

あなたの投資目的に適したポートフォリオに分散投資し、それを単純なバイ・アンド・ホールド戦略によって運用することは、テクニカル手法を用いた時と同等以上のパフォーマンスを達成することができるだけでなく、同時に売買に伴って発生する費用や売買手数料、税金などの節約にもなるのである。

「ウォール街のランダム・ウォーカー」より引用

最後に

世の中は、何もしない人より、何かしている人の方が「偉い」「頑張っている」と評価される。

だが、株式投資においては「株を買って持ち続けるだけ」の人の方が「株価チャートを見て毎日取引している」人よりも、良い成績が残せるのである。

このことを知っている人が、株式投資で成功する人と失敗する人の差であると僕は考えている。

教育系の漫画「ドラゴン桜」でも、「知らないということは実に恐ろしいことだ」ということを述べている。

「知るか」「知らないか」、たったこれだけの違いで有利か不利の差が大きくでる。このことは、株式投資でも言えることである。

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