永続的競争優位性を持つ企業とは、独自の強みを長期的に維持し、競合他社に対する優位性を保ち続け競合他社そっちのけで収益をドンドン増やしていく企業のことである。
ということで、以前に「貸借対照表から永続的競争優位性をもつ素晴らしい企業をみつけよう」という記事を書いた。
が、今回は「損益計算書」から永続的競争優位性をもつ企業の見つけ方を紹介したい。
良い投資先を見つけるのには「貸借対照表」より「損益計算書」を重視した方が良いと僕は思っている。マゼラン・ファンドを運用したピーター・リンチも同じことようなことを言っており、会社の価値を判断するのに重要なのは収益と資産で、とくに収益が重要だと述べている。
損益計算書の見方
企業を評価する時にまずは稼げてるのどうか、そしてその稼ぎ方が良い稼ぎ方であるかどうかがとても大事である。
では、良い稼ぎ方をしている企業を見分けるのに損益計算書のどこをみれば良いのか?「バフェットの財務諸表を読む力」の本の中から、自分なりにポイントを纏めてみた。
- 売上原価は一貫して低いか?
- 販売および一般管理費は一貫して低いか?研究開発費・減価償却費を多額につぎ込んでいないか?
- 支払い利息は少ないか?
- 純利益は右肩上がりか?利益率は高いか?
意外と当たり前のことなのだが、僕自身株式投資をする上で特に重視しているのが「利益率の高さ」と「支払い利息の少なさ」だ。
長年いろんな会社の損益計算書を見てきた思ったのだが、良い稼ぎ方をする会社は同業他社に比べて利益率が高いことが多い。そしてめちゃくちゃ稼げてるので銀行からの借入を必要とする場面が少なく、支払い利息は少ないか無しということが多い。
こうした会社を永続的競争優位性をもつ企業の可能性が高いと僕は思っている。
では1つ1つの項目を使って、損益計算書から永続的競争優位性を持つ企業の見つけ方を紹介したい。
売上原価は一貫して低いか?
永続的競争優位性を持つ企業は一貫して粗利率(※粗利益/売上高)が高い。
その理由として、永続的競争優位性を持つ企業は売上原価をはるかに上回る価格設定ができるからだとしている。また、その反対に凡庸の企業は自社の製品・サービスを値下げすることでしか対抗できないため粗利率が低くなる。
みんなが欲しい物やサービスは、たとえ値段が高くても買ってしまう、とくにこだわりがなければ、値段が安いもので済ませる。投資をするなら、みんなが欲しい物やサービスを扱う会社のほうが永続的競争優位性を持つ企業の可能性が高いお話だと僕は認識している!!
ちなみにどれくらいの粗利率を求めれば良いのだろうか?
ごくごく一般論で言うと(もちろん例外もあるが)、粗利率が40%パーセント以上の企業は、なんらかの永続的優位性を持っている可能性が高い。反対に40パーセント以下の場合は、所属する業界のきびしい競争によって、企業の利ざやが圧縮されている可能性が高い。20パーセント以下の企業は、たいていの場合、競争の熾烈な業界に属しており、このような業界では、どの会社も持続可能な競争優位性を構築することができない。
「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール」より引用
ちなみに売上原価については、一貫性も重要である。一時的に売上原価が下がり高い粗利率を叩き出している企業は、凡庸な企業の可能性が高いため避けるべきだと述べている。
販売および一般管理費は一貫して低いか?研究開発費・減価償却費を多額につぎ込んでいないか?
永続的競争優位性は一貫して販売および一般管理費(SGA費)が低い。
バフェットが永続的競争優位性を持つ企業として認めているコカ・コーラのSGA費は、一貫して粗利益の約59パーセントであり、ムーディーズは一貫して約25パーセント、プロクター&ギャンブルは一貫して約61パーセントである。
それと反対に永続的競争優位性を持たない企業はSGA比率が激しく上下動する。たとえばGMは過去5年間でSGA比率が28~83パーセント範囲で変動したり、フォードは89~780パーセントの範囲で変動している。
また、上記の本ではSGA費の比率について以下のように述べている。
粗利率にたいするSGA費の比率が30パーセント以下なら、優良企業とみなれるが、SGA比率が30から80パーセント近い数字でも、永続的競争優位性を持つ企業は数多く存在する。ただし、たびたび100パーセント近い数字を、もしくは100パーセント越の数字を示す企業は、所属業界特有の激しい競争に巻き込まれていると考えていいだろう。
「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール」より引用
競争に打ち勝つために、(稼ぎ出す利益に合わない)設備投資や研究開発費を注ぎ込まなければいけない企業は避けるべきである。
それよりかは、減価償却も終わっている・研究開発費も必要としない、伝統的で今なお愛され続けている定番商品を持ち、作れば作るほど儲かる老舗の饅頭屋さんのような会社に投資した方が良いのだと僕は理解している!!
支払い利息は少ないか?
営業利益に占める支払い支払利息の比率が低い企業は、永続的競争優位性を持つ企業の可能性は高い。
永続的競争優位性を持つ企業は、一貫して莫大な利益をあげている。そのため事業拡大などの資金は自己資金でまかうことができる。だから巨額の借り入れをする必要はない。
本当のリッチな人というのは、借金をしなくても自分の稼いだお金で楽しい人生を過ごすことが出来る!!このことは、企業にも当て嵌まるというこのなのだろうか?
純利益は右肩上がりか?利益率は高いか?
単年て純利益に凹みがあるとしても、長期的に見て右肩上がりのトレンドであり、かつ利益率が高ければ永続的競争優位性を持つ企業の可能性は高い。
永続的競争優位性を持つ企業の利益率とはどれくらになのだろうか?
原則を言うと(もちろん例外は存在する)、売上高に占める純利益の割合が、長期的に20パーセント以上で推移してきた企業は、何らかの長期的競争優位性から恩恵を受けている可能性がきわめて高い。逆に、一貫して10パーセント以下のを示しつづける企業は、どの参加者も永続的競争優位性を持ちえない過当競争気味の業界に属している可能性が高い。
「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール」より引用
良い会社は高い利益率を誇る。20パーセントという数字を1つの基準にしたらよいと認識している。
ヤクルト本社(2267)
つい先日に、ヤクルト本社(2267)の株を購入した。
残念だけど、ヤクルトの損益計算書を確認したところバフェットの永続的競争優位性を持つ企業のポイントに該当しない項目があった。
- 売上原価は一貫して低いか?
→過去10年の粗利率が55~59%の間で収まっており、売上原価は一貫して低い。 - 販売および一般管理費は一貫して低いか?研究開発費・減価償却費を多額につぎ込んでいないか?
→過去10年の粗利における販管費の比率は77~83%で収まっている。販管費に一貫性はあるが、ものすごく低いという訳ではない。
また研究開発費・減価償却費については、一貫しており多額をつぎ込んでいる訳ではない。 - 支払い利息は少ないか?
→ヤクルトの支払利息はかなり少ない - 純利益は右肩上がりか?利益率は高いか?
→過去10年のヤクルトの純利益は右肩上がり(年平均:11.9%成長)で、利益率は8.7%である。利益率のみで言えば、バフェットの言う永続的競争優位性を持つ企業には及ばない。
株式投資をして数十年経つけど、なかなか永続的競争優位性を持つ企業のポイントにすべて該当する企業に出会う場面が少ない。
それでもヤクルトの損益計算書は数ある企業の中で良い方だと僕は思うし、永続的競争優位性を持つ企業の1つだとも思っている。
この考えが正しかどうかは、10年・20年・30年後のヤクルト本社の損益計算書を見て確認したい。
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