ゲームや勝負には相手がいる。その相手に勝つためには、単純な足し算だけでなく、かけひきや頭脳プレイが必要となる。
このかけひきや頭脳プレイを研究しているものが「ゲーム理論」である。
この「ゲーム理論」の入門本として、京都大学准教授の逢沢明さんが書いた『ゲーム理論トレーニング』がある。
この本のなかで、株式の売買について以下の記載がある。
株式の売買でも、「できるだけ負けを減らす、敗北の被害を少なく」することが、ゲーム理論の立場でも重要な極意です
「ゲーム理論トレーニング」より引用
特に株のデイトレをしている人、デイトレで儲けたいという人は、「できるだけ負けを減らす、敗北の被害を少なく」ということがどれだけ大事かということを学んでおくべきである。
デイトレで勝つというのは非常に難しい。一説には、8割の人が負けているとも言われている。
だからこそゲーム理論で相手に勝つ方法を学び、また「損失」への対応や考え方を学ぶことは非常に重要だと僕は思う。
投資上手は「損失」に敏感
「ゲーム理論トレーニング」の本のなかに、以下の質問がある。
あなたは、A社の株を1株1万円で買っていたとします。なお、過去の最高値は2万円です。その後、最安値が400円になったことがありました。
今、1株7000円だとします。売る勇気がありますか?
「ゲーム理論トレーニング」より引用
ここで「売る」と決断を出来た人は、ゲームに強い素質があると「ゲーム理論トレーニング」では述べられている。
株式投資では、損をしても売らななければならない場合がある。そうしないと、もっと大きな損失をこうむるかもしれないからだ。
だが、最安値の400円まで下がったら、損失は9割6分となる。これほどの損失を受けた場合は、取り戻すことが出来ない。
総合的に判断すると、即刻売るというのが妥当な判断である。
この例題は、実際に存在した企業の実例である。最盛期の株価は2万円以上をつけていた企業であっただが、歯車が狂い続けて株価は20円未満まで下がり上場廃止になったのである。
しかし、人によっては3割の損失は誤差ではないという人もいるだろう。だが、株式投資に参加している8割の機関投資家は乱効果が激しい株式市場での3割の損失は誤差と考えている。
そんな環境で勝負する以上は、自分のモノサシだけで勝負しては勝つことは難しく敗色濃厚となってしまうのである。
損失は割合で考えろ
株式投資では同じ損失でも深刻度が違う。そのことを説明する意味でも、「ゲーム理論トレーニング」の本のなかで以下の問題が出ている。
1000円の株価が750円に下がりました。放っておいたら、また下がって、500円になりました。2回の下げのうち、どちらのほうが深刻でしょうか。
「ゲーム理論トレーニング」より引用
この場合、どちらの250円の下げである。しなし何%の下げかという割合で計算してみると、
- 最初の下げは、1000円の25%
- 後の下げは、1000円の約33%
となり、後の下げの方が深刻である。
このことから分かることは、損失は「割合」で考えるべきであるということ。そして、金額という絶対値で考えるのではなくて、元の金額との相対値でみるべきだということだ。
株式投資で成功したい人は、客観的かつ合理的に考えることは大切であり、それは主観とは少々異なると「ゲーム理論トレーニング」では述べられている。
また、割合とうい見方で、損失を考えることができるようになれば、なぜ損失を抑える方針が大事かがよく分かるようになってくる。
例えば、1000円の株価が3割下がり700円になった。では、何割の値上がりで元の1000円に回復できるのか?という問題があったとしよう。
答えは、約4割3分(1000/700=1.429)だ。
3割の値下がりしたのを取り戻すのに、4割3分の値上がりが必要である。また、5割の値下がりであれば、2倍に上がらないと元の値には戻らない。
下げが大きければ大きいほど、必要な値上がり幅が極端に大きくなってくる。だからこそ、たとえ損をしたとしても、損失を取り戻せる価格のうちに売り払って「損切り」をする。
このことが、株式投資では非常に大事となってくるのだ。
ゲーム理論を学ぶ
株式市場全体が上がったり下がったりの繰り返しで、株価がある範囲を上下するだけのブロック相場が続いてるとしよう。
こうしたブロック相場では、誰かがもうけると、誰かが損をするという「ゼロサムゲーム」という状態となる。
こうした状態では「株式投資に熟練した人たちがもうけたしたら、そのもうけをちょうど打ち消すだけの損失は、下手な初心がかぶる」ことになる。
こういうことに気づき、そういう仕掛けになっていることを、きちんと論理的に学ぶのに非常に役立つのがゲーム理論である。
最後に
株のデイトレは非常にリターンが大きい取引である。1カ月で資産を2倍にすることも出来るだろう。
だが、リターンの大きさはリスクの大きさでもある。だからこそ、多数のデイトレーダーがその資産を失い退場していくのだろう。
だからこそ、ゲーム理論を学ぶということは非常に意味がある。
「ゲーム理論トレーニング」の本で述べられているように『できるだけ負けを減らす、敗北の被害を少なく』という、デイトレで成功するために必要な極意が理解できるからだ。
しかし世の中には、株式のデイトレはいくら知識や技術をつけても儲けることは出来ないという考え方もある。
もっと詳しく言えば、だた単純に株を持ち続けるだけの方が、あくせく株を売買するよりかはリターンが大きくなるというものだ。
そのことをアメリカの経済学者であるバートン・マルキールがその著書である「ウォール街のランダム・ウォーカー」で、以下のように述べている。
あなたの投資目的に適したポートフォリオに分散投資し、それを単純なバイ・アンド・ホールド戦略によって運用することは、テクニカル手法を用いた時と同等以上のパフォーマンスを達成することができるだけでなく、同時に売買に伴って発生する費用や売買手数料、税金などの節約にもなるのである。
「ウォール街のランダム・ウォーカー」より引用
このことについて詳細が知りたい方は、以下を参照して欲しい。
株式投資とは、非常に奥が深い。けれでも、ゲーム理論を学ぶことは無駄ではないと僕は思う。
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