前回の記事で「バビロン大富豪の教え」から『何か1つ「守りたいもの」を持て』ということで、頼れる「友人」愛する「恋人」信頼の置ける「家族」など何でも良いから何か1つ守りたいものを持つ。このことが充実した人生を送るための1つの方法であることを紹介した。
今回も、「バビロン大富豪の教え」に書かれている充実した人生を送る方法を紹介したい。
お金はおまけ
「バビロン大富豪の教え」の主人公であるバンシルに対して「働く必要ってあるんですか?」「金さえあれば働く必要はないですよね?」と質問された時に「お金はおまけ」だと回答した。そして、以下のことを述べている。
人に感謝されるように、今、懸命に仕事をする。そのことが一番大事で…それさえ続けていれば必ず…光が差す。その光はお金だけじゃなく心をも満たす。だから金持ちになった者も仕事を続けるんだ。
「バビロン大富豪の教え」より引用
「バビロン大富豪の教え」を忠実に守り貧乏な武器商人の息子であったバンシルが成り上がり大金持ちになったとき、そのとき出した答えは「お金はおまけ」だった。
お金を稼ぐということより、まずは真剣に仕事に向き合う、どうすればお客様に喜んでもらえるのか考えて仕事に励む。このことが大事であり、そうすることで自分自身も満たされ、その結果としてお金がついてくるというこであった。
充実した人生を送るには、まずは真剣に仕事に向き合う。その結果として、お金がついてくるという考えは正しいのかも知れない。だが僕のレベルでは、生涯この領域に達することはないような気もする。だけど「お金はおまけ」という考えは心の奥底に閉まって置きたい。
日本郵船(9101)
真剣に仕事に向き合っている人が働いている会社は退職者が少ないはず、十数年の社会人生活の経験から何となくそう思った。ので離職者が少ない大手企業ランキングで検索してみたら、日本を代表する海運会社の「日本郵船」が上位にランキングされていた。
この「日本郵船」は2021年の8~10月にコツコツ株を購入した銘柄だ。平均取得単価は8,010円で、現時点(2022/1/26)で約2%と僅かな評価益をもたらしている。
せっかくなので『退職者が少ない≒真剣に仕事に向き合う人が多い(お金はおまけ)??』という考えのもと、こうした会社の株価はどういったものなのか分析してみることにした。結論としては、「日本郵船」は「コモディティ型」企業の可能性があり投資に向かない。そして、今の株価は割高であるというものであった。
株価指標とチャート
「日本郵船」の現時点の株価は8,250円で、PER(予):2.0倍、PBR(実):1.35倍、ROE(実):25.59%、配当利回り(予):9.7%となっている。
また「日本郵船」は海運業に分類されており、海運業全体の市場平均のPERは4.88倍となっている。「日本郵船」の現時点のPER(予):2.0倍となっており、海運業全体の市場平均と比較して割安感が伺える状態となっている。
業績の状況
「日本郵船」の売上について、この10年間は2015/03月決算をピークに右肩下がりである。過去10年の年平均で言えば約1.8%のマイナス成長である。だが会社予想では、今期の売上は前期比24.3%と大幅な増収となる見込みである。
当期利益について、この10年間で3期は赤字であり安定感はない。だが、過去10年の年平均で言えば約5.9%のプラス成長となっている。また今期の当期利益にいては、売上同様に前期比410%と大幅な増益となる見込みである。
当期利益の利益率について、過去10年の平均利益率は約△0.4%となっている。この数値は、同じ海運事業の「商船三井」「川崎汽船」と比較してもほぼ同じ数値である。
キャッシュフローについては、ここ10年でフリーキャッシュフローがマイナスの年が5回あり、キャッシュフロー的には安定感があるとは言えない。
配当については、ここ10年は増配・減配を繰り返している状態である。また、今期の配当については1株:200円→800円と600円の大幅な増配となる見込みである。
利益の質
利益の質であるアクルーアル(税引き後利益-営業キャッシュフロー)の状況は、以下の通りである。
※
アクルーアルは税引き後当期純利益(※特別損益を除いた税引き後の利益)を用いるが、確認するのに少し手間なので「日本郵船」の決算書に載っている『親会社の所有者に帰属する当期利益』の数値をそのまま使っている。
- 2019/03月決算 当期利益:△44,501百万円 営業CF:45,260百万円
→アクルーアル:△89,761百万円 - 2020/03月決算 当期利益:31,129百万円 営業CF:116,931百万円
→アクルーアル:△85,802百万円 - 2021/03月決算 当期利益:139,228百万円 営業CF:159,336百万円
→アクルーアル:△20,108百万円
2019/03月決算は赤字なので除外して考えるとして、2020/03月決算・2021/03月決算のアクルーアルはマイナスとなっている。ので「日本郵船」は現金収入を伴った質の高い利益を生み出している企業と言える。
現時点の株価分析
「日本郵船」の10年後の予想BPS(1株当たり純資産)を算出し期待収益率:年15%と設定した場合に、現時点の株価がどういう状況なのかを確認してみた。
- BPS成長率:年0.7%
過去10年から算出した平均BPS成長率 - 10年後の予想BPS:3,994.6円
前期のBPS:3,701.1円と上記のBPS成長率より算出 - 現時点の予想株価:987.4円
年15%の収益率で算出(※割引率が年15%)
「日本郵船」の現時点の株価は8,250円で、年15%の収益率を目指すには今の株価は、あくまで計算上ではかなりの割高だと判断できる。
黄金銘柄の特徴チェック
世界でも有名なフィナンシャル分野の教授であるジェレミー・シーゲル博士は、市場平均をつねに上回りつづける銘柄を黄金銘柄と名付けおり、黄金銘柄には3つの特徴があると述べている。
「日本郵船」が、この黄金銘柄の3つの特徴に当て嵌まるのか確認してみたところ、条件に当て嵌まるとは言い難い状況であった。
- PERが市場平均をわずかに上回る程度
→「×」、日経平均のPERは18.39倍となっており、「日本郵船」のPER(予):2.0倍となっている。 - 配当利回りが市場平均並み
→「×」、日経平均の平均配当利回りは1.75%となっており、「日本郵船」の配当利回り(予):9.7%となっている。 - 長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っている
→「?」、日経平均の増益率を調べてみたが分からなかった。だが「日本郵船」の過去10年の経常利益は年6.6%で、当期利益は年5.9%の成長率を誇っている。市場平均は不明だが、まずまずといった数値ではないかと個人的には思っている。
また、シーゲル博士は黄金銘柄の特徴として「看板商品にしがみつき、かたくなに品質を守って、市場を海外に広げる方針を貫いている」もあると述べている。「日本郵船」が、看板商品を持っていると僕は考えていない。だが市場を海外に広げるという点では、世界2位の海運会社というだけあるので、その方針は貫いていると考えている。
以上のことから、僕は「日本郵船」はシーゲル博士が言う黄金銘柄には、ぴったりと当て嵌まらないと思っている。
「消費者独占型」企業を見分ける8つの基準チェック
株式投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットは、株式投資で成功するためには「消費者独占型」企業に投資すべきだと述べている。そして「消費者独占型」企業を見分けるには、以下の8つの基準に照らし合わせることで判断することが出来る。
「日本郵船」が「消費者独占型」企業を見分けるためには8つの基準に当て嵌まるのか確認してみたところ、「消費者独占型」企業とは言い難かった。というよりは、バフェットが投資すべきでないと言っている「コモディティ型」企業の可能性が高いという結果であった。
- 消費者独占力を持つと思われる製品・サービスがあるか
→「×」、「日本郵船」が消費者独占力を持つと思われる製品・サービスがあるとは言い難いと僕は考えている。 - 1株当たり利益(EPS)が力強い増加基調にあるか
→「△」、過去10年の1株当たり利益(EPS)は、年平均約22.1%で成長している。ただ、赤字黒字を繰り返しているのでEPSが安定的に増加しているとは言い難い。 - 多額の負債を抱えていないか
→「×」、「日本郵船」の前期の当期利益は139,228百万であった。そして、固定負債は960,809百万円である。「日本郵船」は、利益をあげるために多額の長期負債を調達しなければならない「コモディティ型」企業の可能性が考えられる。 - 株主資本利益率(ROE)は十分に高いか
→「△」、「日本郵船」の前期の株主資本利益率(ROE)は25.59%と高い数値だが、過去は7%以下の数値となっている。 - 現状を維持するために、内部留保利益の大きな割合を再投資する必要があるか
→「△」、「日本郵船」の過去5年の設備投資・研究開発費を見ると、売上に対して10%くらい割合となっている。このことから「日本郵船」は、ある程度の追加加投資を必要とする企業の可能性がある。 - 内部留保利益を新規事業や自社株買戻しに自由に使えるか
→「△」、「日本郵船」は業績を見ている限り、それほど自由に内部留保利益を新規事業や自社株買戻しに使えるとは言い難い。だが、最近は大幅な増益を達成しており「2022年5月以降での自己株式取得を含めた株主還元も検討の上、決定する予定」とIRトップメッセージの記載があった。ので、最近になってからはある程度の自由に利益を使えるようになった可能性もある。 - インフレを価格に転嫁できるか
→「×」、「日本郵船」はコンテナ定期船事業の競争力確保のために、国内大手3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)によるコンテナ船事業統合するオーシャンネットワークエクスプレスジャパン(ONE JAPAN)を設立している。このことから、「日本郵船」は単純にインフレを価格に転嫁できるほど甘くない業界で戦っていると考えられる。 - 内部留保利益の再投資による利益が、株価上昇につながっているか
→「△」、ここ数年は株価は上昇している。だが、これは内部留保利益の再投資が上手くいった為なのか、僕には判断することが出来なかった。
「消費者独占型」企業の4つのタイプチェック
バフェットは、「消費者独占型」企業には以下の4つのタイプに分けられると述べている。
1.長期使用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売業者が扱わざるをえないような製品を作る事業
「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」より引用
2.他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざるをえないコミュニケーション関連事業
3.企業や個人が日常的に使用し続けざるをえないサービスを提供する事業
4.宝石・装飾品や家具などの分野で、事実上地域独占力を持っている小売事業
「日本郵船」は様々な物資を運ぶコンテナ事業を営んでいるので、「企業や個人が日常的に使用し続けざるをえないサービスを提供する事業」に該当する可能性はあると僕は考えている。だが、顧客が何が何でも「日本郵船」で運んで欲しいというほどもブランド力があるのかと言われると、そこまでのブランド力はないと思っている。
まとめ
「日本郵船」は、離職者が少ないので労働者としては働きやすい企業なのかも知れない。
だが、「コモディティ型」企業の可能性は捨てきれない。「コモディティ型」企業の場合、一時大きな利益を上げることがあっても、その利益の大半は設備投資に費やされて株主のリターンに繋がらない可能性がある。
僕はあまり深く考えずに、高配当だからというのが大きな理由で「日本郵船」を購入した。もしかして間違った投資なのかも知れない。
だが、労働者が働きやすい企業を応援するという意味と、間違った投資がどのような結果を生むのかを含めて、しばらくは保有したいと思う。
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