新製品や新技術を生み出す会社に投資したら、最高のリターンを得ることが出来るのか?

株の本のイメージ 株の勉強

ほんの少し前にインターネットという新しい技術が生まれた。このインターネットというのは、人々にとって欠かせないものとなり、そして多くの人に大きな恩恵を与えることになった。

恩恵として身近な例で言えば、家電量販店でのショッピングがそれにあたるだろう。

インターネットが生まれる前までは、消費者は商品の価格を比較することが難しく、実店舗の言い値で買うことがほとんどであった。

だが、インターネットが普及することで商品の価格を容易く比較することができる。そして、その価格をもとに実店舗で交渉できるようにもなった。

新しい技術というのは、大多数の消費者にとっては幸せを運んでくれる。だが、ある者にとっては足を引っ張るということが多々存在するものなのだ。

技術革新が高い利益を生み出すとは限らない

新しい技術や新商品などは、多くの人々を幸せにしてくれる。が、投資家に幸せを運んでくれるとは限らない。

このことについて世界でも有名なフィナンシャル分野の教授であるジェレミー・シーゲル博士は、その著書である「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」という本のなかで、以下のように説明している。

投資家の世界には、次の一般概念がある。新製品や新技術の開発に、第一段階から参加できれば、金持ちになれる。技術が急激に進歩する時代、わたしたちが求めるのは、新たな何かを発見した、新たな会社だ。人々の夢をかきたて、同時に、財布の紐をゆるめる新発明を持つ会社。こういった会社が経済を牽引し、成長の原動力となる。その株を買えば、偉大な企業が育つとともに、自分の財産も育つ。

だが、この前提はまちがっている。経済の成長と利益の成長とは、別のものだ。それどころか、生産性の向上が利益を破壊し、価格の急落につながることさえある。

「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」より引用

この例として、データ記憶装置(ストレージ)技術の話がある。

ストレージ技術の革新や進歩により大容量の記憶媒体が生まれ、この大容量の記憶媒体を使用した音楽プレーヤーの「iPod」・ゲーム機「Xbox」など様々な商品を生み出す原動力となった。

だがほとんどのストレージ会社は、こうした原動力の恩恵を受けることができずに赤字に苦しんでいる。

このストレージ技術の話は、『技術革新が必ずしも高い収益を生み出すということはない』ということを端的に表してくれている。

合成の誤謬

経済学の古典的法則に「合成の誤謬」というものがある。「合成の誤謬」とは、簡単に言うと部分的に正しいからといって、全体的に正しいとはかぎらないという内容だ。

この「合成の誤謬」について、「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」では以下のように語っている。

個人であれ、会社であれ、それぞれが努力することで、他を上回ることができる。だが、あらゆる個人、あらゆる会社が、おなじ努力をすれば、当然ながら、そうとはならない。これとおなじで、どこか1社が生産性を向上させる戦略をとり、それが競合他社には真似できない戦略だったらなら、その会社の利益は伸びる。だが他の会社もおなじ技術を習得し、揃って実施しはじめれば、業界全体のコストが下がり、価格も下がって、生産性向上の恩恵は消費者が手にする。

「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」より引用

よくあなたの会社で「労働者の生産性を上げ、コストを下げる」といった再建プランや改善策が生み出されることがあるだろう。だが、これらの多くは他の会社でも採用できるものがほとんどだ。

こうした場合、頑張ってコスト下げた恩恵は、あなたの給料に反映されることはない。その恩恵は、値下げという形で消費者が手にすることになる。

株式市場でも、似たような現象が見られる。

よく株式市場では、設備投資こそ利益の源泉と信じられていることがある。だが「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」では、この考えは間違っていると述べている。

「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」の中で、実際に1957年~2003年の間で設備投資対売上比率が最高と最低の分類に分けて、そのリターンがどうであったかを調べている。

結果として、設備投資対売上比率が最高の部類のリターンは『年率:9.55%』だったのに対して最低の部類は『年率:14.78%』であった。しかも、この『年率:14.78%』という数字は、S&P500種平均を年率3.5%を上回る好成績を収めていた。

ソフトバンク(9434)

僕は、2020年10月に「ソフトバンク」「ワイモバイル」展開する通信会社の『ソフトバンク(9434)』の株を、1,213円で100株購入した。

現時点(2021/9/24)の株価は1,584.5円で、約30%の評価益とまずますの成績を残している銘柄である。

ソフトバンクの株価チャート

このソフトバンク銘柄の特徴は、巨額の設備投資を行っているということだ。

ちなみに2019年度の設備投資額は、ソフトバンクは約3000億円であった。同行他社であるNTTドコモは約5700億円、KDDIは3500億円とソフトバンクと同様に巨額の設備投資を行っている。

また売上高設備投資比率も、毎年10%以上と比較的高い水準であることも特徴の1つだ。

ソフトバンクは、巨額の製造設備費を投じている。このことで、ソフトバンクの生産性は向上するだろう。だが、同行他社も似たように巨額の製造設備を投じて生産性を向上させている。

もしかしたら電気通信の業界は泥沼の争いになり、恩恵を受けるのは株主ではなく消費者のみということになるのかも知れない。

ソフトバンクの株主として願うことなら、大きな恩恵は諦める。けれど『そこそこの恩恵は是非ともお願いします』といったところなのかも知れない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました