株式投資のリターンを決めるのは企業の増益率ではなく、増益率が投資家の期待を上回るかどうかだ

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世界でも有名なフィナンシャル分野の教授であるジェレミー・シーゲル博士は、その著書である「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」という本のなかで、株式投資における「成長の罠」について以下のように述べている。

成長の罠にはまった投資家は、革新をもたらし、経済成長を牽引する企業や業界に、過大な対価を支払う。ひたすら成長率を追い求め、話題の銘柄を買い漁り、胸躍る最新技術を探し回って、なるべく成長率の高い国へと資金を振り向ける。こうした投資アプローチは、低い投資収益率しかもたらさない。それどころか長期的なデータをみるかぎり、過去に際立った運用成績を達成してきた銘柄は、斜陽業界や低成長国に属しているケースが多い。

「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」より引用

ほとんどの人は投資する銘柄を選ぶとき、利益・収益を重視している。そして、利益・収益が大きく伸びそうな企業・業界に投資したいと考えている。

だがシーゲル博士によると、この考えは株式投資における「成長の罠」にハマっていると言っている。そしてシーゲル博士は、株式投資のリターンは「企業の増益率ではなく増益率が投資家の期待を上回るかどうか」が焦点となると以下のように語っている。

株式投資のリターンを左右するのは、企業の増益率ではなく、実際の増益率が投資家の期待を上回るかどうか、この一点にかかっている。投資家の増益期待を知りたいとき、最良の指標となるのはPERだ。別な調査として、S&P500からPERが低い銘柄を選んでポートフォリオを組んだところ、そのリターンは市場平均を年率約3ポイント上回った。PERが高い銘柄を選んだポートフォリオでは、同約2ポイント下回った。

「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」より引用

利益・収益が大きく伸びそうな企業・業界の銘柄は、実際に優秀な業績を達成することもある。だが、そうした企業・業界の銘柄は投資家の期待が高い(高PER)の株価となっている。

そのような投資家の期待が高すぎる銘柄は実際に優秀な業績を達成したとしても、株価のリターンとして、投資家の期待が低く控えめな業績を達成した企業・業界に負けることがある。

株式投資には「成長の罠」がある。このことは覚えておいて決して損はないと、僕は思う。

スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージとIBM

「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」の本のなかで、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージ(現在のエクソンモービル)とIBMについての問いがある。

その問いとは、もしあなたが1950年に戻ってオールドエコノミー陣営の「スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージ」と、ニューエコノミー陣営の巨人「IBM」の2つから1つを選ぶならどちらに投資するのかというものだ。

もしあなたが「IBM」と答えたなら、成長の罠にハマったことになる。

1950年~2003年の間で、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージとIBMの「1株当たり売上高」「1株当たり配当」「1株当たり利益」「セクター成長率」を比較すると、どれもIBMの方が圧倒的にスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージを上回る成績を残している。

それでも1950年~2003年までの間で、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージは年率14.42%のリターン、IBMは年率13.83%のリターンと、半ポイント以上の差が付いている。金額ベースで比較すると、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージに投資した1000ドルは126万ドルになり、IBMに投資した1000ドルは96万1000ドルとなる。

金額ベースで言えば、IBMはスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージの成績に対して24%も下回ることになるのだ。

なぜ、これほどの差が生まれるのだろうか?

シーゲル博士は単純な回答として、投資家がIBM株に支払った価格が高すぎたためだと述べている。

1950年~2003年までのスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージとIBMのバリュエーション(株価評価)である「平均株価収益率(PER)」「平均配当利回り」を比較すると、「平均株価収益率(PER)」はスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージ:12.97倍、IBM:26.76倍と半分近い差があり、「平均配当利回り」もスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージ:5.19%、IBM:5.19%と同様に半分近い差がある。

そしてシーゲル博士は、以下のように結論付けている。

IBMはたしかに優秀な業績を達成した。だが投資家も、IBMには優秀な業績を期待していた。したがって、IBMの株価はつねに高かった。一方、スタンダード・オイルでは、投資家の増益期待はきわめて控え目だった。したがって、スタンダード・オイルの株価はつねに低く、投資家は配当の再投資を繰り返すことで、保有株を積み上げていった。保有株数が上回った分だけ、スタンダード・オイルのリターンはIBMを上回った。

「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」より引用

最高のリターンをもたらした銘柄

シーゲル博士は、1950年~2003年までの間で運用成績でみた上位4銘柄を調べてみた。その結果は、以下の通りである。

  • ナショナル・デイリーブロダクツ(のちのクラフト・フーズ)
  • RJレイノルズ・タバコ
  • スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージ(のちのエクソンモービル)
  • コカ・コーラ

この結果から「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」の本のなかで、以下のことを語っている。

最高リターンをもたらした4銘柄はどれも、成長産業の一員ではない。技術革新の先端企業でもない。それどころか4社とも、半世紀前に開発した汎用品に近い製品をつくりつづけている。ブランド別に展開する食品や(クラフト、ナビスコ、ポスト、マクスウェル・ハウス)、タバコや(キャメル、セーレム、ウィンストン)、石油や(エクソン)、清涼飲料などだ(コカ・コーラ)。

中略

4社の経営陣は例外なく、特異な分野に的を絞り、優れた製品を新たに市場に投入することに専念した。そして市場を世界に拡大した。いまでは4社とも、国外市場の売上が国内を上回っている。

「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」より引用

株式投資の反省点

僕が株式投資する銘柄は、投資家の期待が低く(低PER)て、高配当のものが多い。そういう意味では、シーゲル博士の「成長の罠」にはハマっていないと言える。

そしてシーゲル博士の「成長の罠」にはハマっていないおかげで、それなりの利益を出している銘柄もチラホラある。

こまた、大損している銘柄もチラホラある。

利益がでている銘柄・損している銘柄の多くは、ほとんどは10年以上保有している銘柄である。他にも様々な銘柄をいくつか保有しているが、このほかにも10年以上保有している銘柄がいくつかある。

そして、それらを合わせた僕の株のリターンは今一つといった感じだ。

シーゲル博士が言うようにもっと長期の50年や100年といった期間で見ると株のリターンはもっと上がるのかも知れない。

だが、僕はそれほどリターンは上がらない気がしている。

その理由は、僕が投資した企業は低PERで高配当かも知れないが、「特異な分野に的を絞り、優れた製品を新たに市場に投入することに専念」したり「市場を世界に拡大」したりしている言い難い企業が多いからだ。

過去の過ちと言えばそうなるのだが、非常に悔しい過ちである。

でも過ちを悔いてばかりもいられないので、この反省を生かせるように今後の株式投資生活に臨みたい。

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