株式市場で儲けるために「ゲーム理論」にある「ミニマックス戦略」は有効なのか?

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相手に勝つためのかけひきや頭脳プレイを研究している「ゲーム理論」の中で『ミニマックス戦略』というものがある。

この「ミニマックス戦略」とは、自分の儲けは誰かの損失となるゼロサムゲームで非常に有効な戦略となる。

株式市場は、ゼロサムゲームの一面を持っている市場である。ということは、株式市場で儲けるために「ミニマックス戦略」を知っておくことは有利なのだろうか?

僕的には株式市場で儲けるために「ミニマックス戦略」の考え方は大事だと思うが、この「ミニマックス戦略」が通用するのかというと難しいと考えている。

ミニマックス戦略とは

ミニマックス戦略とは「マックス(最大)の損失をミニ(最小)にする」という考え方である。

例えば、AさんとBさんが戦っているとしよう。AさんとBさんの両方とも「正面」攻撃と「奇襲」攻撃が選べる。そして、以下の表にはその時のAさんの利益を示している。

ミニマックス戦略のイメージ

また、Aさんの利益はBさんの損失とする。その場合、Aさんは「正面」攻撃と「奇襲」攻撃のどちらを選ぶのが良いのだろうか?

ミニマックス戦略で考えると、Aさんは「正面」攻撃を選ぶべきである。

Aさんにとって最も大きな利益は6である。それは、AさんもBさんも「奇襲」攻撃を選んだ場合です。しかし、Bさんにとっては「奇襲」攻撃よりも「正面」攻撃を選んだ方が有利である。

なのでBさんが「合理的」で「賢い」人ならば、必ず「正面」攻撃を選ぶ。そう考えた場合、Aさんが選ぶべき選択は「正面」攻撃となり、最大の利益ではなく「2」の利益で我慢するべきとなる。

この問題は「ミニマックス戦略」を非常に簡単に説明した例である。この問題で大事なことは「相手も自分の利益を最大にしようと考えている」ということである。

そして、その結果として自分が最も有利な手はなかなか使うことができず「損失を少なくする手」を選ばざるをえなくなるということだ。

損失を少なくしよう

株式市場は「合理的」で「賢い」人たちが戦っている場である。そういう人たちが「自分の利益を最大化」しようと日夜戦っている市場である。

そういった場所では、自分が最も有利な手はなかなか通用しない。なので、できるだけ「損失を少なくする手」を選ぶことが大事になってくる。

そのことの例として、以下の話がある。

株式投資で3回のうちに2回予想が的中するようになった投資家がいる。1回の予想が当たると3割儲かり、外れると3割の損失となる。

この場合の株式投資家の利益はどうなるのか?

答えとして、この投資家は平均的に1回の取引で「約6%」の利益を得ることができる。

簡単な計算式で表すと、1.3×1.3×0.7=1.183。そして、それを3で割ると1回あたりの利益は「約6%」となるのだ。

また、この投資家が損切りを覚えた場合はどうなるのだろう?今までは予想が外れた場合は3割の損失だったのだが、損切りで1割の損失で済むようになった場合はどうなるだろうか?

答えとして、平均的に1回の取引で「約17%」の利益を得ることができるようになる。

簡単な計算式で表すと、1.3×1.3×0.9=1.521。そして、それを3で割ると1回あたりの利益は「約17%」となるのだ。

損失を出来る限り少なくすることで、この場合の利益は約3倍近く増えることになる。

損失を出来るだけ減らしながら、自分にとって最大の利益を得るようにする。この戦略がハマれば、株式市場はあなたにとって打ち出の小槌となるだろう。

「ミニマックス戦略」が通用するのか?

株式市場で「ミニマックス戦略」は通用するのだろうか?

そもそも株式市場で、株価がどう動くのか予想をするということは非常に難しい。その理由の1つとして、株価を動かす要因として大きい企業の利益を予想することが困難であるというものがある。

このことについて、アメリカの経済学者で「ウォール街のランダム・ウォーカー」の著者であるバートン・マルキールが以下のように述べている。

あなたが世の中のすべての会社について、1980年から90年までの期間に実現された成長率を知っていたとしても、90年から2000年の期間に達成された成長を当てることはできなかったに違いない。同様に、90年代の高成長企業についていくら知っていても、それは、2000年代初めの高成長企業を見つける助けにはならなかったのだ。

この驚くべき事実は、まずイギリスの研究者によって報告された。研究対象となったのはイギリスの企業であり、論文は「規則性のない利益成長」という魅力的なタイトルがつけられていた。この論文を聞き知ったプリンストンとハーバード大学の学者たちが、イギリスでの研究と同じことをアメリカ起業について行ったところ、驚いたことに結果は全く同じであった。

「ウォール街のランダム・ウォーカー」より引用

このことの詳細について知りたい方は、以下を参照して下さい。

また、テクニカル戦略と呼ばれる株価チャート分析で株価を予想することも難しい。これについても「ウォール街のランダム・ウォーカー」で述べられている。

株式市場で「ミニマックス戦略」が通用するのかもしれない。が、そもそも株価がどう動くのかを予想するのが困難なのだ。

それでも、何とか頑張って上記の投資家のように3回のうちに2回予想が的中できるようになったとしよう。しばらくは、その予想的中率の高さと「ミニマックス戦略」を合わせることで大いに儲けることが出来るだろう。

だが、株式市場は「合理的」で「賢い」人たちが参加している市場だ。「合理的」で「賢い」人たちが、あなたの戦略を打ち破ろうと考え対応する。

そうすることで、あなたの高い予想的中率はどんどん下がっていく。そんな中で、あなたも新たに高い予想的中率を誇る戦略を生み出そうとする。

こういったことが繰り返され、結局はそこそこの儲けしか得ることができなくなるのだろう。そして「ウォール街のランダム・ウォーカー」で述べられているように、株を頻繁に売買せずに持ち続ける。この戦略の方が儲けが大きかったということになるのかも知れない。

それでも「ミニマックス戦略」である「マックス(最大)の損失をミニ(最小)にする」という考え方は、頭の片隅に置いておいても損はないんじゃないと僕は思ってしまう。

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