株式市場全体が下落しているときには、それにつられて個別株も下落することが多い。これは株式投資のリスクの1つで「システマティック・リスク」と呼ばれているやつだ。
こういう時にこそ、良い株が割安な値段買える。僕はそう信じているので、日経平均が下落中ではあるが、何か良い株はないのか探していると「モリ工業」という銘柄を見つけたので購入することにしてみた。
モリ工業(5464)
2022/5/12に以下の株を購入。
- モリ工業(5464)
ステンレスメーカーの大手、電車やビルの手すり・設備の配管・自動車の排気管に使用されるステンレスパイプ(溶接管)は国内トップ(電車の手すりや荷物棚のステンレスパイプのシェアは100%)。
2,434円で100株購入。
株価指標とチャート
購入時の株価指標は以下の通り。
- 購入時のPER(予):5.5倍、PBR(実):0.41倍、ROE(実):9.69%、配当利回り(予):5.36%
「モリ工業」は鉄鋼業に分類されており、鉄鋼業全体の市場平均のPERは15.44倍となっている。「モリ工業」の現時点のPER(予):5.5倍となっており、鉄鋼業全体の市場平均と比較してかなりの割安感が伺える状態となっている。
業績の状況
「モリ工業」の売上について、ここ10年間は微小な右肩上がりの状態であり、ここ10年は年平均で約0.6%の成長となっている。また、今期の売上予想は前期比4.5%とまずまずな増収となる見込みである。
当期利益については、ここ10年間は凸凹しながらも右肩上がりの状態となっており年平均で約9.6%の成長率となっている。また、今期の当期利益予想については前期比△21.3%と大幅な減益となる見込みである。
当期利益の利益率について、当過去10年の平均利益率は約6.5%となっている。この数値は、ステンレス扱う同じ鉄鋼業の「日本冶金工業」「日本精線」と比較してもかなり良い数値である。
キャッシュフローについては、過去10年でフリーキャッシュフローがマイナスの年が1回だけであり、キャッシュフロー的にはかなりの安定感が伺える。
配当については、2013年度から右肩上がりの状態である。なお、今期の配当については前期と同じ1株:130円となる見込みである
利益の質
利益の質であるアクルーアル(税引き後利益-営業キャッシュフロー)の状況は、以下の通りである。
※
アクルーアルは税引き後当期純利益(※特別損益を除いた税引き後の利益)を用いるが、確認するのに少し手間なので「モリ工業」の決算書に載っている『親会社の所有者に帰属する当期利益』の数値をそのまま使っている。
- 2020/03月決算 当期利益:2,968百万円 営業CF:3,850百万円
→アクルーアル:△882百万円 - 2021/03月決算 当期利益:2,477百万円 営業CF:3,902百万円
→アクルーアル:△1,425百万円 - 2022/03月決算 当期利益:4,320百万円 営業CF:4,997百万円
→アクルーアル:△677百万円
過去3年の状況をみるとアクルーアルは毎年マイナスとなっている。ので「モリ工業」は、ここ3年は毎年現金収入を伴った質の高い利益を生み出している企業と言える。
「消費者独占型」企業を見分ける8つの基準チェック
株式投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットは、「消費者独占型」企業を見分けることができる8つの基準があると述べている。
「モリ工業」が、この「消費者独占型」企業を見分けるためには8つの基準に当て嵌まるのか確認してみた。結果として、「モリ工業」は「消費者独占型」企業と呼べるのではと僕は考えている。
- 消費者独占力を持つと思われる製品・サービスがあるか
→「○」、電車の手すりや荷物棚のステンレスパイプのシェアは100%であり、消費者独占力を持つ製品があると考えられる。 - 1株当たり利益(EPS)が力強い増加基調にあるか
→「△」、過去10年の1株当たり利益(EPS)は年平均約9.6%の成長率となっており、まずまずと言えるレベルである。 - 多額の負債を抱えていないか
→「×」、「モリ工業」の前期の当期利益は4,320百万であった。そして、固定負債は2,052百万円である。「モリ工業」の長期負債は、約半年分の利益で返済可能なレベルとなっている。 - 株主資本利益率(ROE)は十分に高いか
→「△」、現時点の株主資本利益率(ROE)は9.69%となっている。ROEとしてはまずまずな値と言える。 - 現状を維持するために、内部留保利益の大きな割合を再投資する必要があるか
→「△」、売り上げの約5%くらいを製造設備投資に充てている状態である。 - インフレを価格に転嫁できるか
→「○」、シャア率が高い製品を扱っているのである程度はインフレを価格に転嫁できると考えている。 - 内部留保利益の再投資による利益が、株価上昇につながっているか
→「×」、ここ5年の株主資本利益率(ROE)や株価を見ていると、内部留保利益の再投資が株価上昇につながっているとは言えない。
「消費者独占型」企業の4つのタイプチェック
バフェットは、「消費者独占型」企業には以下の4つのタイプに分けられると述べている。
1.長期使用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売業者が扱わざるをえないような製品を作る事業
「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」より引用
2.他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざるをえないコミュニケーション関連事業
3.企業や個人が日常的に使用し続けざるをえないサービスを提供する事業
4.宝石・装飾品や家具などの分野で、事実上地域独占力を持っている小売事業
残念ならが「モリ工業」は、この4つのタイプのどれにも当て嵌まらないと考えている。
自社株買戻しの有無
バフェットは、株主になった企業に対して配当よりも自社株買戻しを行うように働きかけている。その理由は、自社株買戻しをおこなうことによって企業のEPSを増加させ、また株価が非常に高い水準の時に行われても株主にとってはメリットが大きいからだと述べている。
「モリ工業」の自社株買戻しの状況を確認してみたところ、積極的に自社株買戻しを行っており、投資に値する企業だと考えている。
BPS成長率からの期待収益率
BPS成長率から算出すると「モリ工業」は、年平均16.4%の収益率(配当除く)を叩き出すと想定している。
- BPS成長率:年6.4%
→過去10年のBPSをもとに算出した成長率 - 10年後の予想BPS:11,081.43円
→前期のBPS:5,958.60円と上記のBPS成長率より算出
↓ - 期待収益率:年16.4%
→10年後の予想BPSと購入株価:2,434円より算出
将来の予想EPSからの期待収益率
予想EPSから算出すると「モリ工業」は、年平均10.7%の収益率(配当除く)を叩き出すと想定している。
- ROE:7.5%
→過去3年のEPSとBPSから平均ROEを算出 - 内部留保比率:93.4%、配当比率:6.6%
→過去3年のEPSと1株配当から利益比率を算出 - 10年後の予想BPS:11,725.02円
→ROEと内部留保比率から株主資本成長率:7.0%(7.5% * 93.4%)とする。そして株主資本成長率と前期のBPSから、10年後の予想BPSを算出 - 10年後の予想EPS:878.86円
→10年後の予想BPSとROEから、10年後の予想EPSを算出
↓ - 期待収益率:年10.7%
→予想EPSと過去3年の平均PER:7.6倍から10年後の株価:6,679.34円とする。そして10年後の株価と購入株価:2,434円より期待収益率を算出
EPS成長率からの期待収益率
EPS成長率から算出すると「モリ工業」は、年平均15.8%の収益率(配当除く)を叩き出すと想定している。
- EPS平均成長率:9.6%
→過去10年のEPSをもとに算出 - 10年後の予想EPS:1,385.89円
→EPS成長率と前期のEPSから算出
↓ - 期待収益率:年15.8%
→予想EPSと過去3年の平均PER:7.6倍から10年後の株価:10,532.78円とする。そして10年後の株価と購入株価:2,434円より期待収益率を算出
内部留保による再投資の収益率
「モリ工業」の内部留保による再投資の収益率は、年16.5%と想定している。この収益率はまあまあ良い数字だと僕は認識している。
- 2013年~2022年のEPS合計額:3,398.10円
- 2013年~2022年の1株当たりの配当合計額:700.00円
→期間中の再投資額:2,698.10円(3,398.10円 – 700.00円) - 2013年のEPS:110.10円
- 2021年のEPS:556.30円
→EPS増分:446.20円(556.30円 – 110.10円)
↓ - 上記のEPS増分:446.20円
- 上記の再投資額:2,698.10円
→再投資による収益率:16.5%(446.20円 / 2,698.10円)
まとめ
日経平均が下落している中で、トップシェアを誇る製品を作っている「モリ工業」の株を購入してみた。
期待収益率も年10%以上あり、内部留保による再投資の収益率も年16.5%と想定している。全体的な株価は下落しているが、その中でもわりと割安な価格で株を購入できたのではないかと思っている。
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