日経平均が1年4カ月ぶりの安値となるなかで、「JT」株を買い増し

株取引(2022年) 株取引

2022/03/07、ウクライナでの戦闘状態が長期化するとの懸念や原油先物価格が急伸などで日経平均は2020年11月以来およそ1年4カ月ぶりの安値を付けることとなった。

株価がドンドン下がっていくなかで、株を買うのは本当に勇気がいる。だが、今回は萎んでゆく勇気を振り絞って、2020/10月に購入した「JT」株を買い増しすることにした。

「JT」を買い増しした理由は、配当の高さである。アメリカのタバコ会社である「フィリップ・モリス」が、並外れたリターンを生んでいる理由の1つが配当による増配効果であるとシーゲル博士は述べている。

「JT」と「フィリップ・モリス」は違いのかも知れないが、どうしても期待してしまう自分がいるので「JT」株を購入することにした。

また、2020/10月以来の購入ということで「JT」株の現状や今後どうなるのか含めて再度確認してみたいと思う。

日本たばこ産業(2914) ※通称JT

2022/03/07に以下の株を買い増し。

  • 日本たばこ産業(2914) ※通称JT
    世界3位のタバコ販売会社、加熱式たばこ「プルームシリーズ」や「キャメル」「メビウス」のブランドを持っている。

2,036円で100株買い増し。

株価指標とチャート

購入時の株価指標は以下の通り。

  • PER(予):10.5倍、PBR(実):1.34倍、ROE(実):12.7%、配当利回り(予):7.1%

「JT」は食料品業に分類されており、食料品業全体の市場平均のPERは28.87倍となっている。「JT」の現時点のPER(予):10.5倍となっており、食料品業全体の市場平均と比較してかなりの割安感が伺える状態となっている。

JTの株価チャート

業績の状況

「JT」の売上について、ここ5年間はやや右肩上がりの状態であったが前期は約11.1%の増収であり、ここ5年は年平均で約2%の成長率となっている。また、今期の売上予想については前期比△0.4%と微小な減収となる見込みである。

当期利益についても、ここ5年間は右肩上がりの状態であったが前期は約9.1%の増益となっている。だが、ここ5年は成長率を見ると年平均で約△4%とマイナス成長となっている。また、今期の当期利益予想については前期比5.2%の増益となる見込みである。

当期利益の利益率について、過去5年の平均利益率は約16.2%となっており、比較的高い数値を叩き出している。

キャッシュフローについては、過去5年でフリーキャッシュフローがマイナスの年が一度もなく、キャッシュフロー的には非常に安定感がある。

配当については、ここ5年は凸凹しながらもほぼ横ばいの状態である。なお、今期の配当については1株:140円→150円と10円の増配となる見込みである

利益の質

利益の質であるアクルーアル(税引き後利益-営業キャッシュフロー)の状況は、以下の通りである。

アクルーアルは税引き後当期純利益(※特別損益を除いた税引き後の利益)を用いるが、確認するのに少し手間なので「JT」の決算書に載っている『親会社の所有者に帰属する当期利益』の数値をそのまま使っている。

  • 2019/12月決算 当期利益:348,190百万円 営業CF:540,410百万円
    →アクルーアル:△192,220百万円
  • 2020/12月決算 当期利益:310,253百万円 営業CF:519,833百万円
    →アクルーアル:△209,580百万円
  • 2021/12月決算 当期利益:338,490百万円 営業CF:598,909百万円
    →アクルーアル:△260,419百万円

過去3年の状況をみるとアクルーアルは毎年マイナスとなっている。ので「JT」は、毎年現金収入を伴った質の高い利益を生み出せる企業と言える。

黄金銘柄の特徴チェック

世界でも有名なフィナンシャル分野の教授であるジェレミー・シーゲル博士は、市場平均をつねに上回りつづける銘柄を黄金銘柄と名付けおり、黄金銘柄には3つの特徴があると述べている。

「JT」が、この黄金銘柄の3つの特徴に当て嵌まるのか確認してみたところ、ぴったりと条件に当て嵌まるとは言い難い状況であった。

  • PERが市場平均をわずかに上回る程度
    →「×」、日経平均のPERは16.09倍となっており、「JT」のPER(予):10.5倍となっている。
  • 配当利回りが市場平均並み
    →「×」、日経平均の平均配当利回りは1.88%となっており、「JT」の配当利回り(予):7.1%となっている。
  • 長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っている
    →「?」、日経平均の増益率を調べてみたが分からなかった。だが「JT」の過去5年の経常利益は年△4%で、当期利益は年△4.3%とマイナス成長となっている。市場平均の増益率は不明だが、この「JT」はマイナス成長のため増益率が市場平均を大幅に上回っているとは言えない。

また、シーゲル博士は黄金銘柄の特徴として「看板商品にしがみつき、かたくなに品質を守って、市場を海外に広げる方針を貫いている」もあると述べている。この条件については、「JT」は当て嵌まっていると僕は考えている。

「消費者独占型」企業を見分ける8つの基準チェック

株式投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットは、「消費者独占型」企業を見分けることができる8つの基準があると述べている。

「JT」が、この「消費者独占型」企業を見分けるためには8つの基準に当て嵌まるのか確認してみたところ、8つの基準に少しは合致することが確認出来た。

  • 消費者独占力を持つと思われる製品・サービスがあるか
    →「○」、「JT」は「プルームシリーズ」や「キャメル」「メビウス」など消費者独占力を持つと思われる製品を提供している。
  • 1株当たり利益(EPS)が力強い増加基調にあるか
    →「×」、過去5年の1株当たり利益(EPS)は年平均約△4.3%とマイナス成長となっている。
  • 多額の負債を抱えていないか
    →「×」、「JT」の前期の当期利益は338,490百万であった。そして、固定負債は1,387,803百万円である。「JT」の長期負債は、約4年分の利益で返済が必要なレベルとなっている。
  • 株主資本利益率(ROE)は十分に高いか
    →「△」、ここ数年の株主資本利益率(ROE)は約12~13%である。バフェットは、ROEは最低でも15%は欲しいと述べているので、「JT」のROEはやや物足りないと言える。
  • 現状を維持するために、内部留保利益の大きな割合を再投資する必要があるか
    →「?」、調べてみたがよく分からなかった。
  • インフレを価格に転嫁できるか
    →「○」、「キャメル」「メビウス」などの価格推移をみてみるとインフレを価格に転嫁できていると僕は考えている。
  • 内部留保利益の再投資による利益が、株価上昇につながっているか
    →「×」、ここ5年の株主資本利益率(ROE)や株価を見ていると、内部留保利益の再投資が株価上昇につながっているとは言えない。

「消費者独占型」企業の4つのタイプチェック

バフェットは、「消費者独占型」企業には以下の4つのタイプに分けられると述べている。

1.長期使用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売業者が扱わざるをえないような製品を作る事業
2.他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざるをえないコミュニケーション関連事業
3.企業や個人が日常的に使用し続けざるをえないサービスを提供する事業
4.宝石・装飾品や家具などの分野で、事実上地域独占力を持っている小売事業

「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」より引用

「JT」は、「1.長期使用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売業者が扱わざるをえないような製品を作る事業」の条件に当て嵌まる「消費者独占型」企業と言える。

自社株買戻しの有無

バフェットは、株主になった企業に対して配当よりも自社株買戻しを行うように働きかけている。その理由は、自社株買戻しをおこなうことによって企業のEPSを増加させ、また株価が非常に高い水準の時に行われても株主にとってはメリットが大きいからだと述べている。

「JT」の自社株買戻しの状況を確認してみたところ、2015年・2019年と自社株買戻しをしており、積極的ではないが自社株買戻しを行う企業と言える。

BPS成長率からの期待収益率

「JT」のBPS成長率から10年後の予想BPS(1株当たり純資産)を算出した場合、10年後の予想BPSは2,071.05円となる。株価:2,036円で「JT」株を購入したとるすると、10年後の値上がり益は微小であり、年0.2%の収益率(配当除く)となる見込みである。

  • BPS成長率:年2.7%
    →過去5年のBPSをもとに算出した成長率
  • 10年後の予想BPS:2,071.05円
    →前期のBPS:1,583.10円と上記のBPS成長率より算出
  • 期待収益率:年0.2%
    →10年後の予想BPSと購入株価:2,071.05円より算出

将来の予想EPSからの期待収益率

「JT」の10年後の予想EPS(1株当たりの利益)を算出した場合、10年後の予想EPSは252.70円となる。そして、過去3年の平均PERから10年後の株価は3,259.83円と予想できる。この予想をもとに株価:2,036円で「JT」株を購入したとるすると、10年後には約0.6倍の値上がり益となり、年4.8%の収益率(配当除く)となる見込みである。

  • ROE:12.5%
    →過去3年のEPSとBPSから平均ROEを算出
  • 内部留保比率:20.0%、配当比率:80.0%
    →過去3年のEPSと1株配当から利益比率を算出
  • 10年後の予想BPS:2,025.76円
    →ROEと内部留保比率から株主資本成長率:10.0%(12.5% * 80.0%)とする。そして株主資本成長率と前期のBPSから、10年後の予想BPSを算出
  • 10年後の予想EPS:252.70円
    →10年後の予想BPSとROEから、10年後の予想EPSを算出
  • 期待収益率:年4.8%
    →予想EPSと過去3年の平均PER:12.9倍から10年後の株価:3,259.83円とする。そして10年後の株価と購入株価:2,036円より期待収益率を算出

EPS成長率からの期待収益率

「JT」のEPS成長率から10年後の予想EPS(1株当たりの利益)を算出した場合、10年後の予想EPSは123.04円と予想できる。この予想をもとに株価:2,036円で「JT」株を購入したとるすると、10年後には約28%の値下がり益となり、年△2.5%の収益率(配当除く)となる見込みである。

  • EPS平均成長率:△4.3%
    →過去5年のEPSをもとに算出
  • 10年後の予想EPS:123.04円
    →EPS成長率と前期のEPSから算出
  • 期待収益率:年△2.5%
    →予想EPSと過去3年の平均PER:12.9倍から10年後の株価:1,587.20円とする。そして10年後の株価と購入株価:2,036円より期待収益率を算出

利益成長か財務操作なのか

「JT」の利益成長が本業によるものなのか財務操作なのかを確認してみた。結果として、EPSの成長率と税引利益の成長率はほぼ同じであり、財務操作による利益成長ではないと考えられる。

  • 2016/12決算のEPS:237.6円
  • 2021/12決算のEPS:190.8円
    →上記のEPSから年平均:△4.3%の成長率を確認
  • 2016/12決算の当期利益:421,695百万円
  • 2021/12決算の当期利益:338,490百万円
    →上記の当期利益から年平均:△4.3%の成長率を確認

内部留保による再投資の収益率

「JT」の内部留保による再投資の収益率は、年△11.6%と想定している。マイナスの収益率となっているため、この項目の評価はあまり意味がないのかも知れない。

  • 2017年~2021年のEPS合計額:1,000.20円
  • 2017年~2021年の1株当たりの配当合計額:738.00円
    →期間中の再投資額:262.20円(1,000.20円 – 738.00円)
  • 2017年のEPS:221.10円
  • 2021年のEPS:190.80円
    →EPS増分:△30.30円(190.80円 – 221.10円)
  • 上記のEPS増分:△30.30円
  • 上記の再投資額:262.20円
    →再投資による収益率:△11.6%(△30.30円 / 262.20円)

まとめ

「JT」のここ数年の決算をみてみると、どうしてもマイナス成長という結果となってしまう。

だが、アメリカのタバコ会社である「フィリップ・モリス」は長期間で見るとS&P500のリターンを大幅に上回る成績を残している。

日本のタバコ会社である「JT」が、「フィリップ・モリス」と同じ結果になるとは言えないかも知れない。だが、どうしても期待してしまう自分がいるので「JT」に投資をしてしまう。これが正しいのかどうかは、数十年後の結果をもって確かめてみたい。

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